AI時代の新しいパソコン

 

パソコンの頭脳であるCPU（セントラル・プロセッシング･ユニット=中央演算処理装置」は、コンピューターの能力と価格を決定づけるものとして最重要視されてきました。

一方、スマートフォンなど小さな機器ではより小さいサイズで消費電力も抑えるため、CPUチップの内部に様々な周辺機能を詰め込んだSoC（システム・オン・チップ）と呼ばれる頭脳が使われてきました。

これまでCPUに特化してきたインテルは2023年末に、40年振りの製品改革として、これまで外部にあった画像処理やWi-Fiといった機能に加え、メインメモリまで1つのチップに統合した新しいPC用のSoCチップをリリースしました。

今後はPCソフトウエアでもAIによる推論処理などをPC内で動かす必要があるため、そのためのNPU（ニューラル・プロセス・ユニット）も新たに加わった「Intel Core ULTRA」が登場しました。

 

「オン・デバイスAI」とは？

AI（人工知能）では、近年「Chat GPT」などの「生成AI」が話題となっています。それ以前の製品としては「ポケトーク」などの携帯翻訳機も、AIによる自動翻訳が行われています。

AIは、世の中にある様々なデータを機械に学習させることによって成立しています。機械学習は膨大な教材データを記録・分類するなど、高度な演算処理やパワーが必要なため、大型のデータセンターのスーパーコンピューターが必要です。ポケトークやChatGTPなどはこうしたクラウド上のサーバーにリクエストし、結果をインターネット経由でデバイスに返す方式でした。

一方、これにより個人のデータが大手企業のサーバーに集まる事による情報プライバシー上の問題も懸念されています。

「オン・デバイスAI」は、先行してスマートフォンで導入が進んできました。ネットーク上のサーバーに頼らずに、自然言語による命令にデバイス内の情報で対応したり、カメラの画像をAIが認識して編集処理をする、文章を要約する等々。こうしたオンデバイスAIは、とくにAIと意識しない中で、すでに多く利用されています。

こうした流れが、パソコンにも波及しています。

2025年はこの流れが本格的になっています。これまでクラウド上の大規模なデータセンターでしか動かせないと考えられてきたLLM（大規模言語モデル）が、手元のPC内だけで動かせる新しい技術が次々登場しています。

 

いよいよ｢ノートPCだけでチャットAIが動く｣時代がやってきた

（GIZMOD社サイトより）

 

新しいインテルCore ULTRA（シリーズ2）は、これからのAIを活用するソフトウエアが動作するため、従来のCPU・GPUに加え、NPU（ニューラル・プロセッシング・ユニット）、さらにWi-Fi 7や高速Thunderbolt 4（USB4）など周辺機器のインターフェースや、今まで外部のDIMMスロットに搭載していたメインメモリまで1つのチップに統合したSoCに進化しました。

 

SoCチップ内に統合されたメインメモリーはLPDDR5X-8533で、25年11月現在最速のメモリーで消費電力も低減されています。

これまで基板上に分散配置されていた各機能を、微細化された半導体プロセスで統合する事によって電気抵抗を最少化、演算速度を上げながら消費電力を大幅に削減しています。結果、搭載PCでは同じバッテリー容量でも以前より長時間駆動が可能となっています。

「Copilot+PC」とは？

「Copilot+PC」は、Microsoft社が提唱しているAI対応PCの基準で、以下の条件を満たしたPCを指すトレード･マークのようなものです。

①AI推論を低消費電力で担当するNPU（ニューラル･プロセッシング･ユニット）のTOPS値が40以上であること。

②メモリーが16GB以上（ DDR5/LPDDR5）

③ストレージが256GB以上のSSD（磁気ハードディスクではなく）

この条件を満たしている機種は「Copilot+PC」を名乗る事ができるというものです。

2025年11月現在、Intel製CPUで①の要件を満たしているのは、学園生協共同購入モデルA・Bが搭載している「Core Ultra 200Vシリーズ」のみとなっています。

この基準に満たない機種は「AI PC」と称する事になっています。

 

「AI PC」は「Copilot+PC」に劣るのか？

Microsoft社は、特に①の「NPU」に高い性能を要求していますが、AIを動かす上ではGPU（グラフィック･プロセッシング･ユニット）の性能も大きく影響するので、この基準を満たしていないとAIを動かせないというワケではありません。

NPUを搭載したAI対応PCには「Copilotキー」がありますが、必ずしも「Copilot+PC」でなくとも、Copilotを始めとする様々なオンデバイスAIが動かないわけではありません。

 

MicrosoftのAIである「Copilot」は、今のところはビジネスユーザー向けの機能が中心に見えますが、最近はMicrosoft以外の様々なアプリケーションでも、オンデバイスAI対応PCを前提とした、新しい機能がリリースされています。

これから最低でも4年以上使うPCを選ぶ上では、AIに対応するNPUや強力なGPUを搭載したものを選ぶ必要があります。

 

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